◇告白

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 昨日から、事あるごとにずーっと、話しかけているのだけれど。  やっぱり人がいる所では、ほとんど話してくれない。  昨日は放課後は部活だったし。  ……こんなに部活が鬱陶しいと思ったのは、初めて。  バスケが大好きすぎて、いつでもしていたい位なのに。  バスケより類の方が気になるって、それだけだって、バスケ始めた小3以来、初。  で。  今日。  祈りまくったおかげか、見事に晴れた。  100メートルとリレーに出るメンバーは、放課後教室で着替えて、校庭に集合。100メートルに出るのは、各クラス10人ずつ。  その中で、更に早いメンバーが5人ずつ、リレーの練習もする。  オレと類は、リレーも練習。  ……足速くて良かった。  さっさと着替えて、類の前の席によりかかる。 「早く着替えて、行こうぜ、類」  そう言うと、類は、小さくため息。 「浩人ー先行ってるぞー」  昨日も今日も、オレが類に構ってると、皆、遠巻きに見てる。というか離れてる。  それもなんだかなと思うけど、とりあえず、今は、オレが類と仲良くなるのが先。類と他の奴の関係は、後回し。  帰宅組も部活組ももう教室には居なくて、練習組も今先に行ったので、教室にはオレと類の2人だけになった。 「……だから、いいよ、先行って」  2人になると、言葉を、発する。  ほんと。 あからさまだよなー……。 「オレは類と行きたい」 「――――……だから、類て呼ぶなってば」 「言っとくけど、オレが類って呼んでるの、もう皆知ってるよ。まあ当たり前だよね、オレ、デカい声で呼んでるし」 「…………」 「だから今更、気にする必要ないよ」  言うと、類は、黙って、それから、はー、と息を付いた。 「にしてもさ、こんな個別練習があるとかさ。先生たち、すごい気合入ってるよな? やっぱり3年連続で負けるわけにはいかないか」  笑いながら、そう言うと。  類は、体操着を頭からかぽ、とかぶりながら、オレをちらっと見た。  あ。可愛い。それ。  ……髪の毛、ポワポワしてて。  言ったら、蹴り飛ばされそうなことを思いながら。 「何?」  聞くと。 「――――……手、抜けば良かった……」 「ん?」 「……あん時、お前が横に居たから――――……」 「んん?」 「……なんか、もう、色々うるさいし……負かしてやろうとか」 「え」 「……静かになるかなと思ったりしなかったら、適当に走ってたし。そしたら、こんなとこ、出なくて良かったのに」 「――――……え、何それ」  なんか今、意外過ぎること、言ったけど。 「類ってもしかして、オレを負かそうとして、本気で走ったの?」 「……そう。したら、お前、思ったより速くて」 「――――……」 「途中から本気で走ったけど、無理だったし」 「あ、あれって最初から本気で走ってねえの?」 「……もっと遅いと思ってたし」 「じゃあ、類、もっと速いって事か。 あれ、2本目3本目は? タイム、一気に落ちてたよな?」 「これに出されるの思い出して、遅く走ったんだけど……」 「……1本目が速すぎて、入れられちゃったのか」  ぷ。  可笑しい。  なんか、涼しい顔して、そんな事、考えてたのか。 「――――……」  く、と笑ってしまう。 「……何、笑いすぎ」  ちょっと睨まれるけど。 「なんか、類の行動にさ。オレが、そんな風に関わってて――――……で、類が失敗したなーとか思ってんのって」 「――――……」 「なんか、可愛い」 「……は? 可愛い??」 「うん、可愛い。類のペース、乱せるのって、すげえ嬉しい、オレ」 「――――……」  呆れたように、オレを見て。 「……言わなきゃ良かった。……やっぱり、話さない」  ぼそ、と言われて、また笑ってしまうと。  着替え終わった類が、オレを置いて、すたすた歩きだす。 「ていうか、待っててやってんのに、置いてくなよ」 「……頼んでないし」  言われて、そりゃそうだけどと、苦笑い。  なんか。  ――――……類って。こんな冷めた顔でそんな事、思ってたとか。  オレを、負かそうとしてたんだ、とか。  ……おもしろ。 かわいい。  そういうのを、少しでも、オレに話してくれるってだけでも。  ――――……嬉しい。 (2021/8/15)
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