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ギリギリ勝ったけど――――……。
類、今、普段走ってないんだよな……。
それでギリギリって。
これ、走り込んだら、負ける気がする。
……もったいないなー、陸上部、入ればいいのに。
ちなみに、集まってるメンバーの中で、オレと類が、1位と2位。
これで、リレーは、類が第一走者、オレがアンカーという事に決まった。
リレーのバトン練習などをして、今日の練習は終わりになった。
解散後、指導に来てた教師が1人、類に話しかけてるので、近寄っていくと。陸上部の顧問らしく、類を陸上部に、誘っていた。
うちの高校は、部活は必須ではない。
やりたい奴が、やる。
類は、もうやめたんで、と、はっきり断ってた。
「やればいいのに」
オレが言うと、類は、入ってくんな、みたいな顔をしてる。
教師は、もっと言ってくれ、みたいな事をオレに言ってる。
「いつでも入部してきていいからなー?」
うしろで叫んでるのを聞きながら、歩き出した類に並ぶ。
「……お前このまま部活だろ」
「オレも教室に荷物は取りに行くから。一緒にいこ」
「――――……」
何か言いかけたけど、黙ってしまった。
拒否るの、諦めたのかな。
「ていうかさ。類。デート、だかんな?」
「――――……」
すごく嫌そう。
「……何でお前そんなに速いんだよ?」
「バスケで走り込んでるからじゃねえ?」
「にしたって――――……」
「オレ、小学生の頃、走り方教室みたいなとこに通ったからかなあ」
「……それにしたって、速すぎ」
はー、とため息をつきながら言う類に。
「類、デートするんだしさ」
「……」
「連絡先教えて?」
「……やだ」
「……何で?」
「――――……別に待ち合わせだけ決めればいいだろ」
「何かあって遅れるとかなったらどうすんだよ」
「そしたら、中止」
「類って」
上履きを履いて、さっさと歩いて行く類を追いかけて、また隣に並ぶ。
「どこ行きたいか明日までに考えて?」
そう言うと。
類は、またため息をつきながら。
「お前の好きでいいから……」
「……ほんと? じゃあ、オレ、明日までにめっちゃ考えてくるから」
「そんな考えなくていいよ、簡単に……」
「無理無理。類とのデートだし。今週の日曜は? オレ、午後空いてる」
「――――……あんまり知ってる奴が居そうにないとこにして」
「……なんで?」
「お前と一緒なの、見られたくないから」
「――――……」
普通に聞いたら、オレの事が嫌なんだと思うとこだけど。
――――……多分、逆の、意味なんだろうな。
オレを変な噂に、巻き込まないための。
そう思うと、何だか意味も分からない切なさに襲われけど。
「楽しいとこ、探してくる」
「――――……」
類はオレを見て。
また、ため息をついた。
(2021/9/11)
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