◇「Rain」本編

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「――――……」  何となく言葉に詰まって、類は口を噤んだ。  それから、ふ、と気付く。 「……何でお前背後から来る訳?」  よく考えると、浩人が走ってきたのは、方向的に駅からではない。 「駅前、雨宿りの人がどんどん増えててさ。そん中で相合傘すんの、類が嫌がりそうだから、ちょっと離れた所で待ってた」 「……じゃあ初めから、相合傘とか言うなよ」  ボソッと言った類に、浩人はクスッと笑いながら、少し濡れた自分の髪を掻き上げた。 「オレは見られてもいいんだけど、類がそういうの恥ずかしがりそうだから、見られないようにしただけ。相合傘はしたいから、これは絶対なの。分かる?」 「――――……分かんない」 「はー? 分かるだろ?」  クスクス笑う、浩人。 「分かんないよ」 「……分かってるくせに」  ほんと素直じゃないなーなんて、笑って。  浩人は類の手から傘を取った。 「ありがと。帰ろ、類?」 「…ん」  浩人が差し掛けてくれる傘に入り直し、2人でゆっくりと歩き出す。 「―――…また雨強くなったな」  類の言葉通り。 傘に跳ね返る雨の音がますます強くなってる。  嫌そうに顔をしかめた類を見て、浩人はふ、と苦笑い。 「……んだよ?」 「雨、ほんとに嫌いなんだなーと思って。まあ、そういえば昔からか」 「……好きな奴いんの?」 「――――……オレ好きだけど?」  ……そんな奴いるんだ。  と思ってしまう位雨が嫌いなので、隣の理解不能な浩人を、まじまじと見上げてしまう。  ……そういえば、浩人って。  嫌いなもん、あるのかな。  ……あんまり、何かを嫌いとかいうの、聞いたことがない。
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