251人が本棚に入れています
本棚に追加
「――――……」
何となく言葉に詰まって、類は口を噤んだ。
それから、ふ、と気付く。
「……何でお前背後から来る訳?」
よく考えると、浩人が走ってきたのは、方向的に駅からではない。
「駅前、雨宿りの人がどんどん増えててさ。そん中で相合傘すんの、類が嫌がりそうだから、ちょっと離れた所で待ってた」
「……じゃあ初めから、相合傘とか言うなよ」
ボソッと言った類に、浩人はクスッと笑いながら、少し濡れた自分の髪を掻き上げた。
「オレは見られてもいいんだけど、類がそういうの恥ずかしがりそうだから、見られないようにしただけ。相合傘はしたいから、これは絶対なの。分かる?」
「――――……分かんない」
「はー? 分かるだろ?」
クスクス笑う、浩人。
「分かんないよ」
「……分かってるくせに」
ほんと素直じゃないなーなんて、笑って。
浩人は類の手から傘を取った。
「ありがと。帰ろ、類?」
「…ん」
浩人が差し掛けてくれる傘に入り直し、2人でゆっくりと歩き出す。
「―――…また雨強くなったな」
類の言葉通り。 傘に跳ね返る雨の音がますます強くなってる。
嫌そうに顔をしかめた類を見て、浩人はふ、と苦笑い。
「……んだよ?」
「雨、ほんとに嫌いなんだなーと思って。まあ、そういえば昔からか」
「……好きな奴いんの?」
「――――……オレ好きだけど?」
……そんな奴いるんだ。
と思ってしまう位雨が嫌いなので、隣の理解不能な浩人を、まじまじと見上げてしまう。
……そういえば、浩人って。
嫌いなもん、あるのかな。
……あんまり、何かを嫌いとかいうの、聞いたことがない。
最初のコメントを投稿しよう!