◇「Rain」本編

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「……なんで雨、好きなんだよ?」  変な奴、と言う、類の表情に、浩人はプッと笑った。 「そんな嫌そうな顔しなくても良くない?」 「……だって雨嫌い」 「そぉ?」  人通りの少ない道路を、ゆっくりゆっくり歩く。 「―――……類は、雨の何が嫌いなの?」  浩人の穏やかな声。  ――――……不思議と、不機嫌な感情が、薄れていく。                         「……濡れるの嫌だし」 「嫌だし?」 「……傘さすのめんどくせーし」 「めんどくせーし?」 「……降った後暑くなるのも寒くなるのも気分悪ぃし」 「……気分悪いし?」  浩人がクスクス笑いながら、類の言葉を繰り返して、先を促す。 「他は?」 「……服は濡れるし靴も汚れるし」  浩人が途端にプッと吹きだした。 「何か、類、子供みたいだな」 「……るせーな。とにかく、嫌いなんだよ」 「――――……ふぅん。そっかー。嫌いかー」  浩人は面白そうに類を見下ろしてきて。  一瞬辺りを見回して。足を止めると。 「……何?  ……!」     少し背をかがめて、浩人は類の唇にキスをした。         「な、にすんだよ、こんなとこで」        真っ赤になった類が声を潜めて、でも小声で怒っている。  クスクス笑いながら、浩人は類を見つめる。      「……傘あると、2人で隠れられていいじゃん?」 「……」 「―――……ちゃんと類、傘1本で迎えに来てくれたしな?」 「っ……お前が」 「ん?オレが?」 「……2本持ってきても捨てるって言ったからだろ」  ぼそぼそと呟く類を浩人は愛おしそうに見つめて、道路側に傘を向けると。  再びキスした。         「何でそんなに可愛いの?」 「……っの、バカ!」  ますます赤くなる類に、浩人はクスクス笑う。       
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