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「雨降ってると、なんか静かで気持ちよくない?」
「――――……」
「雨の音、聞いてるのも結構好きだし」
「――――……」
「……まあ土砂降りの中歩くのはちょっと微妙だけど……」
クスクス笑う。
「でも、まあ土砂降りでもなんでも――――……傘で隠れれば、類と外でキスできるし。やっぱりそれが一番好きかなー……」
「……お前ほんとバカだな」
「バカとか言いながらもさ。……類だって嬉しいだろ?」
「……嬉しくないし」
「いいよ、分かってるから。嫌だったら、傘2本持ってくればいいんだもんな。まさかオレがほんとに捨てると思った訳じゃないだろ?」
その言葉に。
何だか気持ちを見透かされたような気がして。
何も言わずにいると。
浩人は、また、クスクス笑う。
「迎えに来ないって選択肢だって、ある訳じゃん? でもちゃんと来てくれるしさ……可愛いなぁ、類」
……何だかな。もう。
……迎えに来ない、なんて、選択肢、ほんとにあると思ってんのかな。
ほんと、浩人、バカ。
黙っていると。
浩人は、あーでも、と言いだして。
「類に、オレを迎えに来ないなんて選択肢――――……無いか」
その言葉には少し驚いて。
心読めるのかなと、たまに思う事を、また思って。
類を覗き込んで、にっこり笑ってる浩人を、まじまじと、見上げた。
何秒か見つめあって。
自然と足が、止まる。
ふ、と笑った浩人の顔が、近づいてくるのを、ただ見つめて。
「――――……」
優しく触れるだけのキス。瞳、閉じずに見つめあったまま。
ふ、と、浩人の瞳が優しく緩んで。ゆっくり、触れた唇が離れた。
「――――……類、可愛いな」
類の頬にも、ちゅ、とキスして、浩人は「歩こっか」と言って優しく笑う。
浩人に出会って、5年。
可愛いと。
言われ続けて、もう、5年。
何でなのか不思議だけど。
いつもこんな風に――――……隣に居てくれてる。
(2021/5/26)
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