◇「Rain」本編

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 ――――……晴れの日の2倍くらいの時間をかけて、やっとの事でマンションに辿り着き、部屋に上がる。 「類、先風呂入っといで?」 「え?」 「濡れただろ? 飯作ってる間に入って来なよ」 「んー……」  返事をして浩人を振り返った類は、自分と触れ合っていた方とは逆側の、浩人の肩がかなり濡れている事に気付く。          浩人は髪や体の滴をタオルで払っていた。  類は自分の肩を見て。そこが全く濡れていない事を確認した瞬間。  浩人のそういうさりげない優しさが。   ものすごく、愛おしくて思えて。類は何も言えなくなる。 「――――……」    言葉が見つからなくて、類が黙って、立ち尽くしていると。 「類?……どした?」  すぐ、気づく。  昔から。いつも。  分かりにくいと言われてきた類の、ちょっとした沈黙に、浩人はすぐ気づく。  別にいつもずっと喋っている訳ではなく、むしろ黙っている事の方が多いのに、何かを言いたくても言えずに黙っていると、すぐ、どうした?と聞いてくる。 「……類?」  黙って寛人を見上げる類を見つめ返して、浩人は、くす、と笑った。 「可愛い顔して。どした?」  すり、と頬を撫でられる。 「――――……どうしたの?」  優しい仕草で、そのまま、類を腕の中に抱き締めた。 「るーい……?」  囁く浩人に、類はギュッとしがみついて、ぽつんと言葉を口にした。 「―――……一緒入ろ」 「え」  浩人は、類を少し離して、顔を見てくる。 「何、珍しい」 「……いいから」 「あー……でも、一緒に入ったら長引くよ? パスタ食べたいんだろ?」    浩人の言う、「長引く」の意味は分かってる。  ――――……でも。 「……パスタ、後でいいから」 「――――……」  浩人がクスッと笑って、類を覗き込んだ。 「――……何。誘ってんの?」  その言葉に反論せずに黙っていると、浩人が優しい声で囁いた。 「お腹すいてるんじゃないの?」 「……大丈夫」  類がそう言うと、浩人は、ふ、と笑いながら、ちゅ、と類の額にキスした。 「ん―……」  そのまま、浩人は類の髪の毛に顔を埋める。しばらくして、一言。 「……オレはさあ……どんな天気でも、類が居るなら好きだよ?」  そんな浩人の言葉に、自然と綻ぶ顔を見せまいとして、類は更にその胸に顔を埋める。  ずっと、雨は 嫌いだった。  濡れるのも、面倒なのも。雨の降る前や後の気候も。  ――――…嫌い だった。  今も。一人だと。嫌いなんだけど。       だけど。 お前と一緒だと。  一緒に入る傘も。  肩くっつけて、歩くのも。  傘に隠れて、キス、するのも。好きなんて。  ――――……ほんと、オレらしく、ない。 「類……?」  ふと頬に触れられて、そっと上向かせられる。   「ふ。 ……可愛い。 今、すっごく喜んでるだろ」  優しく緩む瞳が近づいてくるのをまっすぐ見つめて。  唇が重なると同時に、類は瞳を伏せた――――……。 ◇ 完 ◇ (2021/5/27)  ちゃんと始めてみたTwitterで何をしていいか分からなくて、 文庫ページメーカーというので小説でもあげてみようと 書き始めたんですが……。 長くなりそうで、画像にしてくのが面倒過ぎて断念。 で、こちらにきました…笑 楽しんで頂けたら嬉しいです(^^)♡ ……この二人の話、読みたいですか? お顔ぽちっとしといてくださったら(^▽^)? いつか…30こ? 50こ? とか…集まったら書こうかな。 短編かなあ。なんとなくこの二人は。 当分集まらないことを見越して、いつか集まるまで、ほかの小説頑張ります♡ by悠里 と書いてたんですが、なんだかこの2人の昔を書きたくなってしまい…(笑 次ページから、1話で切っても続きが気にならない程度で、書いていきますね(^^) 思いついた時だけの不定期更新でいきます。2021/7月
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