あの桜は、涙で育つ

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私の部屋の窓から見える 一本の桜の木 今年も、綺麗な桜を咲かせた。 身体が、うまく動かない私は、 今日も、桜を見つめていた。 時を越えて 君を♪ 大好きな歌手の音楽を聴きながら 静かに時を終えようとしている。 いつもと変わらない桜を見つめていると、 今日は、なぜか 涙が溢れてくる そんな私に、そっと手を繋ぐ彼女も 涙を溢している。 二人で、乗り越えてきた人生 私は、そっと目を閉じた。 約束を誓ったあの日 友と、語った日々 辛く、悩んだ時も、私を見守ってくれた 桜の木 あなたを、もう見ることは、 できないだろう 最初の出逢いは、私がこの街に 引っ越してきた時 一人で、サッカーボールを蹴りながら 公園を、探していたあの日 満開の桜が、 私に、元気をくれた これから、『頑張れよ』と 言ってるように、 空高く大きく美しく咲いていた。 私は、この街をすぐに気に入った なんか、頑張れる 『なんとかなる』 って勝手にポジティブな気持ちが芽生えた。 この桜の木は、私に、力をくれた 小中学生では、好きなサッカーで、 活躍し、地域の選抜選手にも選ばれた。 勉強も、頑張れた。 なんか、頑張れた。 『なんとかなるしょ』って言うのが、 私の口癖だった。 本当に順風満帆だった。 桜の木のおかげかな しかし、良いことは、長く続かないのが、人生ですよね。 私は、中学生最後の年 人生が180度変わる出来事に、遭遇した。 親の死 交通事故だった。 私のサッカー大会の帰り道に 親は、事故に巻き込まれた。 最後の言葉が、 親『家に帰ったら、何食べる?』 私『旨いもん』って 気のきいた言葉でも、誉め言葉でも 何でもない、日常の言葉が、最後の会話 最後なら、誉めて欲しかったし 聞いて欲しかったこともあった。 私の夢や これからを聞いて欲しかったんだよ。 だって、 いつも通りに、家に帰って、 今日の大会の話をしながら、 家族で話すと思っていたよ。 病院からの、帰り道 私は、叔父の車に乗らず 街をただ、ただ、ふらふら歩いた 涙が溢れ どこを歩いているかもわからず ただ、一歩 また、一歩と歩いていた。 気がつくと、桜の木の下にいた。 今年の桜の木は、 元気をくれない。 ヒラヒラと散る花びらが 私に淋しさを伝える 落ちた花びらも、 この小雨で、流れていく。 まるで灯籠流しのように 涙がとまらない。 私は、 わたしは これから、一人で、どうすればいいのか? 答えも、見つからず 荒れに荒れた 高校生活 好きなサッカーも、辞め ただ、ただ、自分だけは、 不幸な人間だと思い 周りに迷惑をかけていた。 そんな中 あの桜の木を切ると聞いた。 桜の木は、小さくなり 違う場所に植え替えると言う 私は、どうでもよかった。 昔のことなんて、忘れていた。 私は、今、社会人になり、 地元で、サッカーを教えていた。 荒れていた学生時代に 出逢った、彼女と今も一緒にいる 彼女と、出逢ったきっかけは、 あの桜の木 最後の姿を見に行った時に 小さな桜の木をくれた。 ボランティアで、来ていた彼女は、 なぜか、私に声をかけてきた。 彼女は、年上で、この街の人だった。 私は、彼女に、何故か 自分の気持ちを話すことができた。 彼女は、まるで、あの桜の木だ ただ、黙って、話を聞いてくれた。 ただ、ただ、そっと、そばにいてくれた。 私は、彼女の支えで、頑張ることができた。 あの桜の木の成長も 二人で見てこれた。 毎年、毎年、綺麗な、桜を咲かせてくれた。 今日も、二人で桜を見れた。 明日は、 たぶん、 桜を見れない あの桜の木は、私を見守り、 育ててくれたんだよ これからは、私が貴方達を 見守っていくよ。 ありがとう 桜の木よ これからは、一緒に 見守っていきましょうね
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