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「…これで、いいのかな?」 昨日自分の家に帰った後、慌ててコンビニで買ってきた首輪。 正直、見慣れないそれに違和感しか感じない。 「…それ、付けてくの?」 後ろから聞こえた梨央の声にびっくりして、軽く肩が跳ねた。 「え?う、うん…」 梨央はじっと俺の首もとを見た後、そっか、と笑って見せて、リビングに戻って行った。 合意なしでアルファと番になるのを防ぐためのこの首輪は、もう俺には本来必要ないものだ。 けど、噛み跡を見られるってなんかちょっと恥ずかしい。 付けられたことないからわかんないけど、たぶんあれだな、キスマークを見られるような感覚と近い気がするたぶん。 それに、昨日学校でヒートを起こした俺を、梨央が連れ帰ったことはたぶんもうみんなに知れ渡っている。 …梨央は有名人だし。 それで、俺が噛み跡をつけて学校に行ったらどうよ? 番の相手が梨央であることなんて、たぶん考えなくてもわかるだろう。 …番が梨央であることが嫌なわけじゃない。 たぶん、俺なんかが梨央の番であることが、嫌なんだと思う。 自信がない。 だって、どう考えたって俺は梨央に釣り合わないだろう。 美形で頭も良くて運動もできて。 その上、あの北原財閥の跡取り。 一方俺はどうだ。 勉強もそこそこ運動もそこそこ。 特に秀でてる才能もなければ、顔だって美形とは程遠い。 唯一、誇れることと言えば、梨央と幼馴染みだったことぐらいかもしれない。 けど、フェロモン事故で、梨央と番になってしまった。 俺は梨央の未来を縛る足枷のような存在になってしまった。 「王子様みたいだ、」 あの頃は、こんなことになるなんて考えてもいなかったな。 …王子様の隣には、お姫様がお似合いだ。
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