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「侑羽、僕、先生に呼ばれてるからちょっと行ってくるね。」 そう言って立ち上がった梨央の後ろ姿を、椅子に座ったままぼんやりと見送った。 梨央は、昨日のあれがあってから、ちょっと様子がおかしい。 朝だって、いつもなら抱き締めたりほっぺにキスしたり何だりしてるくせに。 今日は俺を起こしにくるとすぐに、リビングに行ってしまった。 …やっぱり俺が泣いちゃったりしたからかな、 俺に悪いことしたって思って、気にしてるのかもしれない。 「嫌いになるわけない」って伝えたけど、やっぱりちゃんと伝わってなかったのだろうか。 …何て言えばいいのかな、 でもそもそも、いつもよりスキンシップが少ないだけで、それ以外梨央は至っていつも通りに見える。 もし梨央が全然昨日のことを気にしてなかったとしたら、なんか俺、かなり恥ずかしい奴だ。 「なぁ、」 「え?」 声に反応して顔を上げると、そこには梨央の席に腰をかける吉川の姿があった。 何やらお洒落に整えられた茶色の髪に、切れ長の目元が目立つ派手な顔立ち。 制服はかなり着崩されていて、身長はたぶん梨央と同じくらいか、それ以上。 梨央はどっちかと言うと、かっこいいとかイケメンと言うより、綺麗とか美しいと言った形容詞の方が似合う。 けど、吉川はかっこいいとかイケメンって言葉正にしっくりくる気がする。 同じアルファでも、梨央とは全くタイプ異なる人種だった。 俺は梨央と一緒にいるのをたまに見かけるぐらいで、たぶん一度も吉川と話したことがないと思う。 いきなりどうしたのかと、少し身構えて彼の方を見た。 「何で首輪してんの?」 「え…?」 吉川は、机に頬杖をついてこちらを見ていた。 「北原と番になったんじゃねぇの?」 何で知ってるのかと、聞こうと思ってやめる。 梨央から聞いたのかもしれない。 「…知られたくないわけ?梨央と番になったって。」 「……出来れば。」 「…あっそぅ、」 正直、俺の答えに興味なさそうに返事をした吉川が何を考えてるのか全くわからない。 いきなりどうしてそんなこと聞いたのか。 「…鈴木の考えてることもたぶんわかるけど、それ隠してるの北原は面白くないと思うよ。」 「え…?」 「きっと、出来ればその首輪を取ってほしいと思ってる。」 吉川の言ってる意味がよくわからず、口を開きかけたとき。 「ねぇ、鈴木君。ちょっといい?」 教室の外に立ってる女の子が目に入った。
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