15

1/1
2439人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ

15

黒く長いストレートの髪に、すらりと伸びた手足。 小さな顔に、色白の肌。 まるでお人形さんのような美人がそこにいた。 俺がオメガになったからだろうか。 何となく彼女がアルファであることは察することが出来た。 「…うん、何、、?」 立ち上がって廊下に出ようとしたとき、 「…鈴木に何か用?」 吉川に左腕を捕まれた。 驚いて後ろを振り返ると、吉川は全然俺の方なんて見てなくて。 ただ真っ直ぐに、廊下にいる彼女を見据えていた。 「用があるなら、今ここで話せば?」 彼女を見つめながら、ただ淡々と吉川が口を開く。 どことなく空気も重たくなった気がした。 「それとも、ここで話せないようなことなのか?」 淡々と話す吉川に彼女は一瞬悔しげな顔を見せると、何も言わずに背を向け去って行った。 「…悪かったな、勝手に掴んで。」 「あ、ううん、」 吉川がぱっと俺の手を解放し、彼女の後ろ姿を見ながら何やらぼそっと呟いた。 「…鈴木、あいつに気をつけろよ。」 「え?」 「まぁ、とにかくあんま一人になんな。わかったか?」 有無を言わさぬ態度で吉川に告げられ、俺は訳も分からず縦に頷いた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!