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黒く長いストレートの髪に、すらりと伸びた手足。
小さな顔に、色白の肌。
まるでお人形さんのような美人がそこにいた。
俺がオメガになったからだろうか。
何となく彼女がアルファであることは察することが出来た。
「…うん、何、、?」
立ち上がって廊下に出ようとしたとき、
「…鈴木に何か用?」
吉川に左腕を捕まれた。
驚いて後ろを振り返ると、吉川は全然俺の方なんて見てなくて。
ただ真っ直ぐに、廊下にいる彼女を見据えていた。
「用があるなら、今ここで話せば?」
彼女を見つめながら、ただ淡々と吉川が口を開く。
どことなく空気も重たくなった気がした。
「それとも、ここで話せないようなことなのか?」
淡々と話す吉川に彼女は一瞬悔しげな顔を見せると、何も言わずに背を向け去って行った。
「…悪かったな、勝手に掴んで。」
「あ、ううん、」
吉川がぱっと俺の手を解放し、彼女の後ろ姿を見ながら何やらぼそっと呟いた。
「…鈴木、あいつに気をつけろよ。」
「え?」
「まぁ、とにかくあんま一人になんな。わかったか?」
有無を言わさぬ態度で吉川に告げられ、俺は訳も分からず縦に頷いた。
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