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「…もしもし?」 梨央の声によって意識が少し浮上する。 どうやら誰かと電話をしているようだった。 「母さん、三河との婚約の件なんだけど、」 …婚約、、あの女の子との… 盗み聞きは良くないと、ぼんやりした頭で思いつつも、気になって耳を傾けてしまう。 「…あぁ、する方向で検討してほしい。」 「っ、」 梨央の言葉にどくんっと心臓が嫌な音を立てた。 「うん、愛してるんだ。」 その瞬間、足元から体が崩れ落ちるような感覚が俺を襲った。 …あいしてる、か。 梨央が優しいから勘違いするところだった。 あくまで梨央は、俺が幼馴染みってことと番ってしまった責任から俺を構ってくれてるだけ。 「彼だって、そろそろ貴方の子守りから解放されたいんじゃない?」 …本当は、俺が邪魔だったのかな。 梨央は優しいから、態度に出さなかっただけ? 梨央は俺のこと、面倒だった? 思い上がっていたのかもしれない。 梨央の優しさに甘えてしまっていた。 「っ…、」 辛い。苦しい。痛い。 どうして、気づいちゃったんだろう。 分からなければ良かった。 梨央が好きだなんて。
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