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「…侑羽?」 俺が起きたことに気づいたのか、電話を終えた梨央が俺の側に寄ってきた。 「…どうして泣いてるの?」 梨央の白く大きな手が、俺の頬に伸ばされる。 …どうして。 「侑羽?」 どうして俺に手を差しのべるの? 「…体辛い?」 俺の涙を拭うその指の暖かさが、余計俺を惨めにさせる。 「体起こせる?…どうしても辛かったら、抑制剤貰ってくるけどどうする?」 …どうして俺は、自分の番に抑制剤を渡されなければならない? この熱を静めてくれるのは、梨央しかいないのに。 「…りお、」 「ん?」 聞きたい。本当にあの子と婚約するのかって。 聞いたところで答えは、さっきの電話でわかりきっているのに。 梨央の口からちゃんと聞くまで、信じたくないだなんて。 俺はどこまで馬鹿なんだろう。 「…あのさ、」 「うん?」 もともと事故で出来た繋がりなのだから、梨央のためを思えば、番は解除するべきなのだろう。 番を解除されれば、俺の身がどうなるか正直わからない。 …けど、体とかどうとかそんなことじゃなくて、 「…ぎゅって、してほしい。」 俺が梨央の側から離れたくなくて。 「番」と言う関係を利用しようとしている。 「彼だって、あなたの子守りからそろそろ解放されたいんじゃない?」 …本当に最低なんだ、俺は。 ※スター特典で、梨央視点のお話を追加しました。まだ続く予定です。
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