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「眠そうだね、侑羽。」 「…うん、なんかね。」 隣を歩く梨央に曖昧に返事を返して、何の気なしに曇の流れを目で追った。 眠いと言うか、何だか頭がぼんやりしているような気がする。 熱でもあるのだろうか。 …でも俺、熱なんて学校とかの宿泊学習のとき以外出さないんだけどな、、、 まぁそうは言っても、宿泊学習のときも正直自分では具合悪いなんて感覚は全くなかった。 くじ引きで班が決まってるのに、何故か全部の班が一緒になった梨央が、いつも俺のなんかしら変化に気づいて、体温計を渡してくる。 そうすると、大抵俺は37度ちょっとの熱があったりして。 宿泊学習のとき、日中行動してるときは何ともないのに、俺は夕方になると決まって軽い微熱になる。 梨央が念のためお風呂は大浴場に行かずに、部屋で入った方が良いと言うから、俺は大浴場とやらに行ったことは一度もない。 でもそのときは決まって、梨央も俺に付き合って大浴場に行かないでくれるんだ。 部屋についてるお風呂は狭いし、流石に一緒に入ったりはしないけど。 そして朝になると俺の熱は下がってて、翌日は普通に皆と一緒に行動できるんだ。 まぁ、また夕方になると熱が出ちゃうんだけど。 「あ、王子だ、、、」 「北原君だよ!」 ひそひそと飛び交う話し声と、俺の隣に送られる羨望の眼差し。 梨央は生粋のアルファで、頭も良ければ運動もでき、その上、このどこぞの王子様ですかと言った容姿を持つ完璧人間だ。 この高校もそれなりに偏差値のある学校だが、梨央なら余裕でもっとトップクラスの進学校に行けたのではないかと思う。 本来ならば、こんな平々凡々としたベータの俺が、この王子の隣を歩けるなんて有り得ないのである。
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