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おじさまあのね。
おじさまは覚えてらっしゃるかしら、とみどりは一人になった大きな家でくすりと笑った。
大きな目は冴えて今日もろくに眠れやしない。
でも早く寝なくっちゃあ。明日はおじさまとデエトですもの。
うふふ、おじさまは覚えてらっしゃるかしら。
わたくしがはじめておじさまと出会った時のこと。おじさまはとても綺麗だったわ。
まるでナイチンゲールのように寂しそうなのに、美しくってね。わたくし欲しいなあと思ったの。
抱いてくれた手は大きくって、あったかくって、わたくしの王子様だと思ったの。
わたくしの小さな手を引っ張ってくれる方だと思ったの。
でもね、わたくしはあなたにとって子供のような存在でしかなかったし、薄汚い豚野郎共はわたくしがおじさまを欲しいと言ったら大層怒ったのよ。
酷いわよね、わたくしって可哀想よね。
わたくしおじさまが好きよ。ほんとうに、好き。
おじさまが好き。
おじさま?わたくしに愛情を注いでくれてありがとう。
わたくしが綺麗なのはおじさまのおかげです。
でもおじさまはわたくしのものではないの。
わたくしがおじさまを言う通りにしてしまったら、それはお人形だわ。
おじさまが、わたくしのことを思って、自分で、わたくしに全てを捧げてくれなくては、嫌なの。
もしかしたらおじさまの魅力に気づいたアバズレがおじさまの綺麗な体に指を触れたら、
万が一おじさまが寂しくなって心の醜い女なんかに愛を囁いたりするかと思うと、嫉妬で気が触れそうになるの。
だからね、わたくし思ったの。
おじさまを飼うの。
わたくしと言う名の檻で、わたくしの愛と言う餌で。
わたくしのそばにいて頂く罠を一生懸命考えたのよ。
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