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問いかけ
「ねぇ、覚えてる?」
唐突な問いかけに、私は小さくため息をついた。
彼女ーー透の言葉はいつも突然だ。脈絡もなく話を始め、そのうち飽きたように終わらせる。実際のところ脈絡は彼女の中にあることも、飽きたのではなく腑に落ちているのだということも、私は知っているのだけれど。そうでないと十年も友達をやっていない。
「何を?」
とはいえ主語もない質問には答えようがない。聞き返すと、透は無邪気に笑った。
「タイムマシン」
そして、お話の中にしか登場しないであろう物の名を言い放つ。だけど私は、それを一笑に付すようなことはしなかった。
「覚えてるよ」
だって私も知っているから。その物体が実在することを。否ーー実在したことを。
忘れようがない。あれは私たちが、この手で壊したのだから。
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