0人が本棚に入れています
本棚に追加
鏡の中の怪物
「おばけって居ると思う?」とバルに聞いて
みると、望まない答えが返ってきた。
「絶対いるよ。僕この目で見たんだ。」
これ以上聞くのはやめようと思ったが、どうしても気になって「どこでさ」と言うと、
「鏡の中だよ。僕の後ろに立ってたんだよ。
でも振り返るといないんだ.......」
「え...それじゃあほんとは見てないんだね?」
「いや、違うよエデン。いないと思って鏡を見たら、確かにいるんだ。だからもう一度振り返ったんだよ。」
「そしたら....どうだったんだよ.......」
「バンっ!て襲いかかってきた!!」と机を
思いっきり叩いて言った。
心臓が飛び出た。いや、これがほんとに飛び出たんだよ。
「まぁ嘘なんだけどね。」と言うバル。
それから数分間心臓を打つ音は体全体に響いていた。
一方バルは「はると君、机を叩かない」と先生に怒られていた。
大島はるとって言う名前だけど僕はバルって呼んでる。
幼馴染で小5の今も、もちろん大親友だ。
僕の名前は楓、読み方はカエデだから、バルは
エデンって呼んでる。
なんかかっこいいでしょ?
帰ってから鏡を見れなくなった。何かが写ってそうで......後ろに誰がいそうで.......
翌日。いつものようにバルと楽しい話をしようと思ったが、この日の話は少し違った。
「なぁ、エデン。俺の話信じてくれるか?」と急に真面目な口調で語りかけられたので、
僕も深刻な顔になって「もちろんだ、バルの話は何でも信じるさ」と言った。
するとバルが話し始める。
「僕の家がアパートなのは知ってるよな。隣のササキさんって人の家に泥棒が入ったんだよ。お母さんと話してるのを聞いたんだけど、その人の家、何か変なんだ。」
「変って.....何が?」
「鏡に自分の姿が映らないんだってさ。」
「ねぇ、バル。鏡の話で流石に二回目は怖がらないよ。」とふざけて返すと。
バルは真剣な面持ちで「いや、ほんとだよ。」
と言った。
長い間バルを見てきたから、これは本当だと
直感で分かった。
いや、僕らの友情の深さから見てそれは直観
だった。
「ねぇねぇ、2人でどんなに楽しい会話しているのかしら、先生にも聞かせてちょうだいな。」と言う言葉に、
「真剣な話です。」とバルがズバッと返した。
すると先生は
「もう授業始まってます。」と言って僕とバルをひっぺがした。
あまりにも夢中になっていて、授業中だと言うことに気づいていなかった。
図工の時間だったからみんなワイワイやっていて、幸いにも僕たちの密談は聞かれなかったらしい。
下校班を抜けて2人で話をしていた。
「どうも引っかかるのは鏡だよね」とバルに言うと、
「うん」としか答えなかった。
「なんか、元気ないけど。大丈夫なの?」と聞くと、
「ねぇエデン、僕とっても怖いんだよ。隣の家ってことはさ、次は僕の家に来るかもしれないじゃない。」と焦るバルに対して僕は何も言えなかった。
田舎で、帰り道に山を抜ける近道があるのに、
バルは「今日はやめておこう」と言った。
そこには沢山のものが捨てられていて、その中に鏡があった。
たぶん鏡を見たくないんだろう。
家に帰るとお母さんも同じことを言っていた。
「泥棒がうろついているらしいから、なるべく早くみんなで帰ってきなさいね。」
「わかったよ。」と適当に返しておく。
僕とバルは家がそれほど離れていないから、
お父さんのトランシーバーを使って話していた。
「エデン、今日は眠れなさそうだ。どうぞ。」
「安心しろ、警察も動いてるから犯人も下手に動けないはず。しばらくは大丈夫だ。」とバルの不安を少しでもとってあげようとした。
なのに.......
「エデン!また隣の家に泥棒が入ったんだ。」
と言うバルの言葉に驚愕した。
ここまで警察の目をくぐり抜けるやつは
天才か、はたまた幽霊の類か。
「この前はものが荒らされてただけで何ともなかったのに、今回はお金がとられたらしいんだ。」と涙目で話すバルに、僕も今回こそ本当に言葉が出なかった。
「また楽しそうな話をしてるのね」と口を挟んでくる先生に、
「うるさい!ちょっと黙っててください」と
バルが言う。
「職員室に来なさい」と言われて出て行った。
帰ってきたバルは泣いていなかったが、どこか不安そうでいつものバルではなかった。
「ねぇ、ほんとうにやばそうだよ。」と言う
僕に対してバルは
「頼みがある。」と言った。
「もちろん、何でも任せてくれ。」と返事を
すると、
「本当に何でもかい?」とバルが言うので、
一瞬躊躇ったが、
「うん」と言うと、次にバルの口から出たのは予想外なんて言葉では伝えられないものだった。
「僕と探偵をやってくれないか?」と。
「うん」と言ってしまった.........
最初のコメントを投稿しよう!