右ストレートの遺伝子

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☆彡  その人に出会ったのは、私が通う中学校の屋上だった。みんなの目から隠れるようにして屋上で一人お弁当を食べていた私の目の前に、すいと人影が立ったのだ。 「ここでお弁当食べてるんだ」    いきなり話しかけられてぎょっとした私に構わず、その人は私の隣りにストンと腰を下ろした。 「結構いい眺めだね」  ね?と首を傾げて私の顔を覗き込む。さらりとした黒髪から微かに懐かしい香りがする。なんの香りだっけ。そう思う間もなく、切れ長の目が正面から私を捉えた。  私は思わず身を竦めた。 「そんなに怖がらないでよ。あ、でもそうか、あんたはこの姿を知らないんだもんね」  仕方ないか、とその人はため息をついて、続けた。 「でも私はあんたのこと、とーってもよく知ってるよ。産まれた時の体重も、何歳で寝返りを打ったかも、生まれて初めて買ってもらったおもちゃのことも、よく知ってる」
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