右ストレートの遺伝子

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 そう言って、明るい声をたてて笑った。   「3歳の時に本屋さんで本に夢中になりすぎておもらししたこととかも!」  笑うと三日月の形になるその目や、形の良い唇。その屈託のない笑い顔は、確かに私の知っている誰かに瓜二つだった。私の口から自然と言葉が零れ落ちた。 「お母さん…?」 「あったりー」  そう言って、セーラー服の少女は嬉しそうに手を叩いた。胸元のネクタイが、楽しそうにひらひらと跳ね上がった。屋上に照りつける日光が、彼女の頭にきれいな天使の輪を作っている。  なんでこういうことになってるのかは、私にも良く分からないんだ、と言ってお母さんは肩を竦めた。気が付いたら、中学生の姿に戻ってここに居たんだよ。いやぁ、セーラー服って久しぶりに着たけど、結構いいものだね。似合う?  その声は確かに私の知っているお母さんの声をもっとうんと瑞々(みずみず)しくしたような響きだったけれど、話し方は全然違う。なんというかもっとずっと、お転婆な感じだ。お母さんだったら、絶対に「良く分かんないんだ」なんて言わない。頬に手を当てて、「良く分からないのよ」といかにも困ったという風に眉を下げるだろう。
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