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『なんで嘘つくの、美玖ちゃんに酷いことするの!美玖ちゃんが何をしたの!!』
彼女は嗤いながら、こう返してきたのである。
『したよ。私の邪魔。邪魔だったんだもん、あの人』
小学生の時のことだ。
私だって忘れようとした。許そうと思ったこともあった。でも、考えれば考えるほど、最後には心の病気にまでなってしまった美玖のことが忘れられず。暗い性格になり、転校先の学校でも馴染めずに自ら命を絶ってしまった彼女の無念がやりきれず――私は今日まで、鬱々とした感情をため込み続けてきたのである。
自分が考えていることが、一般的に犯罪の類であることは十分わかっていた。
だから、決めたのだ。
――二択だ。もし、その二択で彼女が正解を引いたら……私は手を引こう。そう思っていた。
そう。
もし佳保里が、自分の顔を覚えていたら。
あの日親友を奪われて泣いた自分の顔を忘れていなかったら。たとえ彼女が反省していなくても、少しは罪悪感があったものと信じて手を引こうと思ったのだ。
でも。
――でも、覚えていなかったね、あんたは。
もう、いいや。どうでもいい。残される家族には申し訳ないと思わないでもないけれど、でも。
この憎悪を抱えたまま、生きていくなんて自分には無理だ。
――だから。……死んでね、私と一緒に。
「ビール注ぎますね。えっと、渡瀬さんはがっつり飲む人?一口しか飲まない人?」
「ビール大好き!いっぱい注いでー」
「はーい」
私は笑顔でビールを注ぎながら。彼女が見ていない隙に、そのグラスにそれを落とした。私のグラスに仕込んだのと、同じ錠剤を。
――二択を外した、お前が悪い。
お前は私が、今から地獄に連れていく。
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