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それから5年が経った今日。
僕はまだ下巻を書けていない。
いや、正確には”書いていない”と言ったほうが正しい。
僕には、この本を終わらせることはできない。
僕にはあの女の子の物語に終止符を打つことはできない。
一服しようとベランダに出た。外には、初雪が降っていた。僕はタバコに火をつけて、暗い夜空を見上げた。
5年前のあの日、雪の中で確かに僕はこの本を通じてあの娘と繋がっていた。そして、5年が経ったいまも、僕とあの娘は繋がっている。
僕は白い息を吐きながら囁くように呟いた。
「覚えてるさ。これからもずっと」
この物語は未完でいい。
この物語が終わらない限りは、きっと僕と彼女は繋がっているのだから。
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