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彼女の告白に、僕は感情を言葉に出来なかった。
「下巻は読まないことをお勧めする」
彼女は悲しそうな声で言った。
「下巻は酷い出来だから。結局、彼女は全てから逃げてしまうの。生きることに価値を見い出せなかった彼女は、自ら命を断つ。そして、物語は幕を閉じる。最後には何も残らない」
僕はやっとの思いで言葉を発した。
「下巻はどこで見つけたの?」
彼女は、その問いに答えてくれなかった。
そして彼女は、あらかじめ用意していたかのようにある頼み事をしてきた。
「下巻はあなたが書いてよ。それがこの本を完璧なまま終わらせられる唯一の方法」
彼女は続ける。
「彼女はいつも一人だった。学校にも家にも彼女の居場所なんてどこにもなかった。この本は彼女の唯一。この本を君が読んでくれてた時、彼女と君は確かに繋がっていたよね」
彼女は必死に涙を堪えながら、声を震わせた。
僕は、ただ彼女の言葉を聞くことしかできなかった。
外は、初雪が降っていた。まるで、あの女の子の人生を表すかのように、雪はただ淡々とこの街を一面真っ白に染めた。
雪に気を取られていると、いつの間にか彼女は僕の前から消えていた。
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