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プロローグ:カブトムシのジョン
カブトムシのジョンが死んだのは、九月七日の朝のことだった。
飼い主のヒロトくんは、夏休みの間かかさず早起きをしてジョンにゼリーやリンゴをくれていたし、土がよごれるとすぐに入れかえてくれた。
何より、棚におかれたジョンのかごからはヒロトくんの机がよく見えるので、ジョンはよくヒロトくんが読んでいる本をいっしょに読んでいた。ジョンはそんな時間がたまらなく好きだった。
けれども、二学期がはじまり、ヒロトくんは学校に行くようになってしまったので、最後の一週間、ジョンといっしょの時間はほとんどなかった。
そのことをさみしいと思いながら死んだジョンは、次に生まれ変わるなら、人間になりたいと思った。
だってそうすれば、二学期が始まっても、ヒロトくんといっしょに学校に行って、遊んだり本を読んだりできるから。
――ああ、やっぱり人間ってうらやましいなぁ。
これはそんなジョンが死んだ後のお話。
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