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第一話:ムシビト界へようこそ
気がついたらジョンのたましいは、光の玉になってぽよぽよとうかびながら、長い長い行列に並んでいた。
いつからならんでいるのか、なんでならんでいるのかわからなかったジョンは、自分の前に並んでいるたましいにおそるおそる聞いてみた。
「ねえ、ここは天国なの?」
「君はまだ聞いていなかったのかな? ざんねんだけど、天国はまだだよ。この行列は天国に行けるか、それとも地獄に落ちるか、エンマ様のさばきを受けに行くたましいたちの行列。わかったかな?」
前にならんでいたたましいが、やさしい声で答える。
「そうなんだ。ずいぶんとたくさんいるだね」
先頭が見えないほど長い行列を見て、ジョンはため息をついた。
「たぶん、この行列は虫のたましいの列だからかな? 夏いっぱいしか生きられない虫って多いし。ボクたちセミの仲間とかね」
「セミ……もしかして君はヒグラシのたましいじゃない?」
ジョンに聞かれて、前のたましいはおどろいた声をあげる。
「どうしてわかったのかな? 今は光の玉だから、生きていたころの姿はわからないはずだけど……」
だって、『かな? かな?』という彼の口ぐせは、どう聞いたってヒグラシの鳴き声だ。
「ふふふ、ボクはカブトムシのジョン。よろしくね」
相手のことばっかり知っていて、自分のことを言わないのもばつが悪い。ジョンは笑って、ヒグラシに自己紹介した。
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