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さて、二人で話しこんでいると、長い行列もあっという間に進み、ついにヒグラシが先頭になった。
列の先にあったのは、人間の三倍ほどの高さもある大きな門。そしてその前に立つ赤い和服を着たお姉さんだった。
その人がエンマ様だということに、ジョンはびっくりした。だって、ヒロトくんの本には、エンマ様はひげ面のおじさんだと書いてあったから。
それにしても、エンマ様はふしぎなすがたをしている、と、ジョンは思った。
人間のように見えるのだけれど、ひたいからは長いしょっ角が生えているし、せなかにはうすくすきとおった羽もある。
こんな人間は見たことがないし、ヒロトくんの本でも読んだことがない。
「お主は――野生のヒグラシか」
エンマ様が口を開いた。見た目はともあれ、しゃべり方はエンマ様らしいな、と、ジョンは感心した。
「地獄に落ちるほどの悪いことはしていないが、天国に行けるほどの良いこともしていない。よって、生まれ変わることに決定じゃな」
ヒグラシをじっと見つめて、エンマさまは落ち着いた調子で言った。
「そうですか! じゃあ、生まれ変わるなら人間になれないかな? 木の上から人間を見ていて、人間って楽しそうだなって思ってたんだ」
ヒグラシはエンマ様相手でも、まったくこわがる様子を見せないで、軽い調子で返す。
そんな感じでおこられないかと、ジョンは内心ひやひやしながら見守っていた。
「人間か……。人間になりたい虫をすぐ人間に生まれ変わらせることはできぬ。人間は虫に比べて数が少ないからな。どうしても人間に生まれ変わりたいというのならば、ムシビト界で修行をするのだな」
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