第九話:見えないメッセージ

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「だから助手くんの華々しい探偵デビューを記念して、今日はスペシャルディナーにしようと思ってね」  なるほど。それで材料をたくさん買い込んできたというわけだ。  名探偵であるホームズにそこまでされてしまうと、ジョンとしては照れくさくて顔も上げられない。 「ジョンのおいわいならぼくにも手伝わせてくれないかな?」  おまけにヒグラシまでやる気まんまんみたいだ。  その後行われたパーティはそれはそれは楽しかった。  ホームズが用意したたくさんのごちそうはどれもおいしくて、とくにジョンが大好きなアップルパイは格別だった。  ヒグラシが歌うお祝いの歌は、さすがコーラス隊といったできばえで、ついつい聞きほれてしまったし。  そんな感じだったから、三人で夜遅くまで盛り上がって――。  朝起きたジョンは、ヒグラシがいないことに気が付いた。 「あれ……?」  薄い毛布だけが残ったソファーを見て、そのあと台所を確認する。  ユニットバスのドアまで開けたけれど、やっぱり誰もいない。  朝ごはんはいっしょに食べるものだと思っていたのに、急にいないなんて。  心配になったジョンは、二段ベッドの上でねむっているホームズをゆり起こした。 「ホームズさん。ホームズさん。起きてください」 「んー、なんだ。ジョン」  いつもは早起きなホームズだが、かんじんなときにかぎって寝起きが悪い。  昨日エーミール刑事との引っ張り合いで、体力を使ったからだろうか。 「ヒグラシがいないんですよ」 「なんだ、そんなことか。楽団の朝練習は早い。ジョンが寝ている間に出て行っても不思議はないさ」  そんなことを言って、ホームズはもう一度毛布をかぶって寝てしまう。  でも、ジョンはイマイチ納得がいかない。  ――いくら朝練習だからって、ヒグラシが一言のことわりもなく出ていくだろうか?
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