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「………………待てよ」
曖昧だろうが何かしらの根拠を元にして立てられる、それが仮説という物である。
ユラシルは剣をシーテから引き抜き、ネイフィーに見張っているよう指示。それからユラシルは床に剣を刺して座り、刃に映る自分の顔をジッと見つめる。思考に没頭するためのユラシルなりのやり方である。
さあ、思考に浸ろう───。
「………」
仮説に仮説を繋いでいけば、どこかで真実に近づくことも出来るかもしれない。
「………」
今と未来の知識を元に仮説を立てろ。パズルのように繋ぎ目を見出だし、一つ一つを繋げて広げろ。
「………」
ありもしない、本当は的外れだとしても、頭の中にある確かな知識で本物に迫れ。
「………」
最も現実的で、自分が一番納得出来る形でパズルを完成させろ。
「───…出来た」
パズルが組み上げられた。
仮説にまみれた群像が形になった。
「シーテ、ここでお前と出会えてよかったよ。ありがとう」
「っ…?」
「後は真実を明るみにするだけだ。それはこれからじっくりやっていく、俺の仮説のどこが真実と一致してどこが違うのか、着実に情報を集めていかなきゃな」
立ち上がって剣を持ったユラシルはネイフィーを下がらせる。
「シーテ、お前らはこれまで人間を大勢食い殺してきた。でもそれは生きるためにしてきたことだ。だから俺はお前が何人殺しててもお前を見逃すよ」
「ッ!?ま、待ちなさいユラシル!!何を言っているの!?こいつらのせいで私様の国民は殺されたのに、そんな理由で生かしておくと言うの!?」
「気持ちはわかるぞネイフィー。でも人間だって生きるために動物を殺して食う生き物なんだ。人間だけが特別じゃない、世界の仕組みはそういうモンで、どこかで折り合いをつけなきゃ共存なんて無理な話だろ」
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