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「で、でも、だからって…!!」
「やられたらやり返すなんてしてたらこの世界から生物は消えるんだ。食物連鎖ってモンは根底に非情さがあるから成り立つ。抗うのはもちろん自由、でも抗えないなら、運命がそうなら受け入れるしかない」
「………」
「まっ、それは食物連鎖の話だがな」
ユラシルは剣を肩に担ぎ、遠い目を明後日の方向に向けながら続ける。
「生きるためでもなく生き物を殺すなんてのはあっちゃならねえこと、許しちゃいけないことだ。だから俺は、ただ滅ぼすだけの『終局』を絶対に殺す。復讐もあるけど、何よりあいつを殺さなきゃ人間だけじゃなく世界が死ぬんだ。自然の掟から外れたあの野郎だけは生かしてはおけない」
「………」
「ネイフィー、俺の意見は今言った通りだ。後はお前次第だよ、お前がそいつを生かしておけない確固たる理由があるなら好きにしろ。少なくとも俺は、今の段階ではシーテを殺す必要は無いと考えてる」
「……………、くっ…!」
力任せに床を蹴ったネイフィーはシーテを睨み付けて、
「次に人間を食った時は殺す。私様と関わりが無い人間だとしても、お前たちが人間を襲って食ったと耳にしたら、その時はお前たちを絶滅させてやるッ…!!」
言い切って、ネイフィーがシーテに背を向け歩き出す。
ネイフィーの判断もまた、共存における折り合いによる物。折り合いがつかなければその時は非情に徹する、それも違う形の自然の掟に則った結末である。
「そういうこった。まぁお前は人間との共存を拒んで滅ぼす気だったみたいだし、次に出会った時はホントの殺し合いになるだろうな。俺もその時になったら容赦無く殺すからしっかり覚えとけよ?」
シーテをその場に残し、ユラシルはネイフィーを追いかけ大きな部屋から出ていく。
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