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怪物住まう海底神殿は意外や意外、スリアルス島からそう遠くない位置にあったらしい。先に脱出していた者たちは自力でスリアルス島の高温地帯に上陸していた。
家族、友人、同士を亡くした者たちは嘆き悲しみ涙する者もいて、そんな人たちを尻目に海を見つめて待つ。
自分たちの王を。
自分たちの友を。
「ユラシルくんならきっと大丈夫」
不安を少しでも和らげるためにメイリーが言った。彼女はサラの肩を抱きながら、
「ネイフィー様も、それにあの黒髪の人もいる。それ以上にユラシルくんなら絶対無事でいる」
自分に言い聞かせるための言葉でもある。でもメイリーの言葉に和らいだのも事実で、ずっと沈黙していたシェリムが口を開く。
「そうっすね、僕らでも生き抜いたんならユラシルさんには問題じゃないくらいっす。ユラシルさんが生きてることには心配はしてない……けど」
「あの広間にいた、人間に似た生物のことだね?」
「はいっす…あれは、明らかに他の怪物たちとは違ってたっすから。ネイフィー様、それにあの黒髪の人だけで倒せるのかが気がかりで…」
「けどよ、不思議な男だったよなあの人」
腕組みをしながら海を見つめるバズギー。
「強いのは疑ってねえよ、けど、なんつーのかな……あの国王にも、アリッシュ様にも似てる強者特有の空気ってのがあった。『ワールド』が使えない場所だってのに普通に使ってたしな」
「確かに気になる人ではある。あの人は、どうしてあそこにいたんだろうね」
気になって当然である。光も届かないような深海、それも大量の怪物たちがひしめくあんな場所にどうしていたのか。
どこかの国から派遣された『探索者』……或いは無許可で未開拓地を彷徨く無法者。謎多き男の素性がどうしても気になってしまうバズギーたち。
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