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バズギーもレビック同様笑みを浮かべていた。彼もまた見据える先の遠さに挫けず、ただ先にある理想の自分に胸が踊っていた。
「今のリーバックはバカ強えよ。でも追い付けば俺もバカみてえに強くなってんだ。そうなりゃ見えてくるモンもあんだろ」
「理想の自分以外にもあるのかい?」
「お前の理想がどんなモンかは知らねえ。けどよ、リーバックみてえに強くなったらアリッシュ様の背中も見えてきそうじゃねえか?世界が認めた人類最強の背中だぜ?アリッシュ様にも追い付けりゃあ自然となるんだ、俺の理想───最強の騎士にな」
向上心は成長に繋がる大切な要素である。レビックもバズギーも胸に秘める向上心は凄まじい。だったらきっと、明確な成長がいつか表れるに違いない。
「とんでもないスケールの話っすね…」
「ユラシルくんだけじゃなくアリッシュ様にも追い付くって、本当に最強ですよねそれ」
「最強かぁ、最も強い騎士ってことは僕は越えているということか。でも残念、キミが強くなればなるほど僕だって強くなってるんだ。つまり最強の騎士になるのは僕だね」
「すぐ抜いてやるっつーの」
笑いながらも睨み合う二人にシェリムとメイリーも笑ってしまう。
だがサラだけは笑えず、二人の会話を聞きながら俯いていた。
(あんな怪物を前にしても冷静でいられるくらい強く…か。あたしには、ユラシルみたいに強くなれる自信がない)
巨大な怪物の顔を思い出すだけで震えてしまう。完全に恐怖が刻み込まれてしまい、いつものサラらしい負けず嫌いはどこかへ行ってしまっていた。
(あんな目に遇うくらいなら……もう、あたしは…)
自分には無理で、みんなみたいに前を向けなくなったサラは震える手で自分の頭を掴んだ。
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