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無事に生還を果たしたユラシルとネイフィー。だが歓喜しようにもこの状況では何も出来ないわけで、二人の生還を待っていた者たちは微妙な顔をしながら固まるしかなかった。
揉みくちゃから脱したネイフィーは恥ずかしさから顔を赤らめ、ユラシルは酸欠寸前のせいで青ざめている。対称的な二人は並んで立ち上がり、それから各々待たせていた人々に歩み寄っていく。
「悪い悪い、心配かけたなお前ら」
「心配なんてしてないっ」
「め、メイリーちゃん?どうして怒ってらっしゃるのかしら?」
「怒ってないっ」
フンッと鼻から息を吐いてそっぽ向くメイリーに小首を傾げるユラシルはとりあえず他の子供たちに向き直る。
「全員生き残ってたな、さすが俺が認めた奴らだ」
「あざっす!!」
「お前もよく一人で無事だったな、あの怪物たちを一人で相手してたんだろ?」
「ん?…………あ、ああ!そうそう!気色悪い奴ら相手に死に物狂いで戦ったよ!『ワールド』も使えねえし、もうヘトヘトだわ」
「さすがのあんたも無傷とはいかなかったのね」
「ま、まぁな…」
なお、ユラシルの体にある引っ掻き傷や噛み跡は脱出までの攻防中に出来た物だ。ネイフィーに任せていたとは言え『ワールド』を強奪するべく寝そべって無防備を晒していたユラシルも『シーヒューマン』たちに襲われ悲鳴を上げていた……が、そのことは内緒だから絶対言わない。
「ユラシルくん、あの黒髪の男性はどこに?」
「あのクソ偉そうでいけ好かねえ野郎なら俺たち逃がした後どっか行ったぞ。なんでも無許可で未開拓地を回ってるみたいでどこの国にも属してないらしい。あんな常識知らずの自分勝手な奴はそのうち死ぬから多分二度と会わねえだろうな」
仮にも命の恩人なのにボロクソな言い様。口元が引きつる子供たちと、それを聞いていたネイフィー。
(自分のことをよくあんなに貶せるわね…)
「王様、どうかしたのか?」
「なんでもないわ。ラザルもみんなも無事でよかった、亡くなった人たちも大勢いるけど、それでも全滅があり得るあの状況でこれだけ助かったことに私様は心からホッとしているわ」
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