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ユラシルの秘密は、海底から脱出し海上を目指している間に話していた。ユラシルの本当の姿を目撃したネイフィーには話しておくべきだと思ったから。
「……千年後、本当に世界は『終局』に滅ぼされるのね」
「ああ。だから今殺すんだ。もう俺のいた時代には繋がらねえ、そんなドでかい代償払ったからには絶対やり遂げる。それだけが、逃げてでも生き残った俺の生きてる理由だからな」
「………。世界を滅ぼす怪物を殺す、ね。あなたならきっと出来るわ」
「なんだよ応援してくれんのか?ありがたいねぇ。まぁ俺だけじゃねえんだ、手伝ってくれる奴らもいる。なんとしてでも俺たちでブッ殺してやるさ」
「なんて言ったかしら?『終局』打倒を掲げたあなたが作った組織」
「『未踏の開拓団』。最強揃いの人類代表みたいな連中だよ。その筆頭にアリッシュがいるからな」
「ふんっ、あんな女が筆頭ね。なんちゃって人類最強にどれだけ期待出来るかしら」
「酷ぇ言い種だな」
「………シーテが最後に言っていた言葉、覚えているわよね?」
「……次世代の人間に成り得る進化した生物か。どんなのがいるか楽しみだね、シーテみたいな奴らがいるんなら是非とも踏み台になってもらいたい」
「フフッ、あなたらしい言葉ね。…………ユラシル」
「ん?」
「………いいえ、やっぱりいいわ」
「なんだよなんだよ、命預け合った相棒に秘密は無しだろ?」
「相棒ね………素敵な響きだわ」
ネイフィーはユラシルに体を向けて右手を差し出した。
「困った時はこの私様を頼りなさい、『麗激の女王』と恐れられた私様をね。協力は惜しまないわ、相棒さん」
「……ヘッ、そんな時が来たらよろしく頼むわ」
ユラシルも右手を出して、二人は固く握手を交わした。
殺し合う間柄だったけど、こうして手を取り合えるだけの関係が僅かな時間で出来上がった。相手を知る、それだけで人はいくらでも和解出来てしまえる。感情を持ち合わせた人間ならではの一種の奇跡。
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