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心当たりが無いセインの訝しげな表情にユラシルは目を細める。やはりユラシルとセインでは根本的な点から違うようだ。
「いや、聞いてないならいい。聞いてたら今頃お前は正気じゃいられず喰われてたはずだからな」
「ユラシル、声とはなんだ」
「…………『終局』の声だよ」
「ッ!!?」
「俺の場合はご丁寧に囁きかけてきやがったよ、『全て壊せ』って何回も何回もな」
「………」
「多分、『終局』を心の底から憎んでた俺だから拒めて振り払えたんだと思う。セインじゃ……いや、他の誰だって混乱して抵抗する暇が無かっただろうからな」
「それか、お前が特別だからか」
「特別…?」
セインは躊躇う。言っていいのかを考えているんだ。だけど結局言ってしまう。
「『終局』を知り、時を越えてきた人間だから。あるいは………お前と『終局』だけに通じる何かがあるのか」
「………共通点か。心当たりはある」
「何っ…?」
「俺は『終局』に殺される直前、枯渇してた『ワールド』を『終局』から奪った。『ワールド』で構成されてるあいつの小さな破片を文字通り飲み込んでな」
「───、ユラシル…それはつまり」
「ああ」ユラシルは忌々しげに吐き捨てる。本当に、心の底から自らを軽蔑しながら。
「ここにいるユラシル・リーバックは、『終局』の破片を含んで出来てる可能性があるってことだな」
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