8.衝撃の一言

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8.衝撃の一言

 今日もまたみんなから(くさ)いって言われるんだ。傷つくために学校に行っているようなものだ。暗澹たる気持ちで登校した。背中に成人男性が覆い被さっているかのように身体がクソ重くて辛うじて廊下を進む。  教室前の廊下では柴田くんが二人の友達と立ち話をしていた。やっぱり柴田くんだった。でも友達と一緒だと挨拶しづらいからやめよう。そんなことより、柴田くんは友達と何を話してるんだろう。まさか私の陰口を叩いてるんじゃ、と不安に襲われて心臓をバクバクさせながら耳を澄ませる。 「いや、マジでヤバいから!! お前気づいてねぇの!? マジで授業中ヤバいんだって! もう学校来ないで欲しいわー……」  友達に不満そうに愚痴を漏らしていた柴田くんは「あっ!」と私がいることに気づいて心底嫌そうな顔をした。 「うわっ! 来たし……」  最悪、と低く呟いて苛立った様子でガリガリと天然パーマ頭をかく。私は何も言い返せなかった。もし言い返せば、必ず柴田くんの口から私が傷つくワードが発せられる。一言ったら十返ってくる。メンタルがもたない。そもそも、柴田くんやクラスのみんなに迷惑をかけている分際で言い返す資格なんてあるわけがない。黙って耐えるしかなかった。  もし、『私が(くさ)いのは過敏性腸症候群っていう病気のせいなんだ』と伝えたら、柴田くんは信じてくれるだろうか。いや、信じてくれないに違いない。これは柴田くんが性格悪いからでも冷たい人間だからでもない。普通の人間ならまず信じない。私も自分がこの病気になるまでこんな病気があるなんて知らなかった。知りたくなかったし知らないままでいたかった。  私は俯きながら柴田くんたちの横を通り過ぎた。また『(くさ)い』って言われるかなと思ったけど何も言われなかった。……ラッキーだ。私はちっとも傷ついていない。超ハッピーだ。
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