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心護は不思議そうに首を傾げた。
「嫌いになってないよ」
「嘘だ」
「嘘じゃないよ」
「嘘だ! おならって言うのが嫌で、ガスって言ったけど、私は人前でおならするような汚い人間なんだよ!? そんな私を嫌いにならないハズがない!!」
「何言ってんの? 鈴凰ちゃんは汚い人間じゃないよ」
私は何にも分かってないと顔を顰めながら「ううん汚い人間だよ」と首を激しく横に振った。
「ううん、汚い人間じゃないよ。だって、したくなくても勝手にガスが漏れてしまうんだよね? だったら鈴凰ちゃんのせいじゃなくて『IBS』のせいだよ」
「でも……。みんな我慢してるのに我慢できずにしてしまう下品な私はやっぱり汚い人間でしかない」
私は涙ぐみながら何とかそう返して自分の短い髪を両耳に雑にかけた。
「下品じゃないよ。ただの生理現象だ。誰だってすんのにした人に対して冷ややかな目を向けるのはおかしい。……我慢すんのが当然だって主張する人たちの方がマジで狂ってるし生きづらくしてると思う。
そもそも俺は、他人を平気で傷つけるような人たちを汚い人間だと思ってる。だから鈴凰ちゃんは汚い人間じゃない。鈴凰ちゃんは人を傷つけるタイプには見えないから」
私は目をぎゅっと瞑る。
「そういう風に言えるのは……、心護がまだ私の後ろの席に座ったことがないからだよ。どんなに優しい人でも私が臭いことに気づいた途端に冷たくなる」
「鈴凰ちゃん──、」
心護が何かを言いかけたその時だ。
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