ゲシュタルトと赤い国

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>>> 「もう、そろそろ城の入り口に着きそうだな」 と、コトは思った。 少しずつ前に進んでいるものの、下の方で何か起きてるのか一向に誰かが来る様子が無い。音や気配は遠くにあって、今のところ、キメラが空でも飛んでこない限りは平穏そのものである。 植え込みに隠れながら少しずつ前に進んでいる。 そんなときだった。 「……日本という国は、最終的には、過去を悔い、戦争を嫌った」 ポツリと、少女の声がした。 「魔法を表向き見えなくし、力の無い人間に居心地が良い場所となった」  また、声がした。 この世界に来て出会ったキメラ。 会話をして、結界を張るためのダイスをくれた少女。 今は背後で動けなくなっている。 (――独り言、だよな?) 「『北の故郷、あの国』を逃げ出し、無理やり追い出された人が大勢集まっている」「他の国よりも力が無くても混ざりやすい」 「ここで安い賃金で、ときには誰かのものを奪って泥にまみれてときに理不尽なレッテルから目を背けて……」 「それでも、国に帰るよりはマシだっていって、毎日耐えて過ごしてきた」 ……こんなに饒舌だっただろうか?
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