音闇クルフィ

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車が多い。人も多い。自然が、少ない。  暑い。 熱気がもわもわと影を作っている。 暑い。  コンクリートが歪んで見える。 暑い。 f9a4f58b-3b14-47e5-9ab1-5307be0375ce  灰色の多い、息苦しいビルが互いに存在を競うように並んでいる。いくらかは看板が撤去されたりしていた一方で、そのすぐ横では建設工事をしている。かんかんかん、と何かを打ち付ける音がけたたましく続いている。 ――キノコでーす! これお守り代わりにしてるんですけど、どうですか?  誰かがキノコの形のキーホルダーを配っていた。断る。 (なんか、変な町……)  少女はぼんやりとそれらを見上げた。 奇妙な光景だった。 まるでビル自体が生き物のように蠢き、変化し続け、月や太陽でも無いのに昼間からしつこいほど光る電飾。 それに大きなモニターが眩しい。
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