ライフライン

10/11
前へ
/11ページ
次へ
 喋りながらクローゼットを漁って、下着と新しいスウェットを出す。何だ、一着しかスペアないのか。着替えてもらったらすぐ洗わないと。明日店が開いたら、もう一着調達しとこう。ユニクロかしまむら、近所にあるかな。  考えてると、体温計がピピっと鳴った。 「はい、見せて下さい」  手を出すと、正人さんは体温計を抜いて俺に渡す。自分で見ないのかよ。  何度かな……。  ……38度ジャスト。  ……確かにね、怠くなる数字だね。でも、そんな死にそうな顔しなくていいんじゃないかな。 「……喉が痛い他には何かありますか。腹が痛いとか、頭が痛いとか、関節が痛いとか」 「いや」 「吐き気とか」 「それは……大丈夫だ」  何と見事に純粋な喉風邪。っていうか、喉風邪ならもっと熱上がっても不思議じゃないのに、ほんと丈夫な人だな。  こりゃ、薬飲んで寝たら、明日には回復してるぞ。ユニクロはやめだな。 「……でも、ものすごく怠いんだ」  でしょうね! 慣れてないですもんね。  っていうか、喋れてるし。喉の痛みも大したことないだろ。  眉が下がってるし、大きな目が不安そうに俺を見てる。これは正に大型犬の子犬。  ラブラドール……みたいな可愛いのじゃないな。ハスキーだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加