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顔色は……イマイチか。熱があるから、目元はちょっと赤いけど。手を伸ばして、額に当てる。
……これは、マジで大したことないのでは。
予想ほどカッカしてない。他人の体温ならいざ知らず、正人さんの平熱を俺は体感している。これは間違いなく大したことない。
本人は重病みたいな顔してるけども。
まあいっか。絶縁フィルムを引き抜いて電源が入ったのを確認して、正人さんに渡す。使い方はわかるよな、いくらなんでも。
「悪いな」
テンション低い! しょんぼりしてる。そんなにショックだったのか。あの孤高の狼のような斯波正人が、雨に濡れた子犬のようだ。
これはグリフィンのファンには見せられないな。面白い。
体温計を受け取った正人さんは、それをもそもそと脇に挟む。
「汗かいてませんか? 着替えました?」
「いや……」
風邪引いた時の対応も知らないか。しょうがないな。
「時々着替えないと、冷やしますよ。着替え出しますね。それと、食べてからじゃないと薬飲めませんからね。お粥だけでも食べて下さい。食欲はありますか?」
「あんまり」
「なくても食べて下さい。食べないと治りません」
「そうか……」
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