入学式の朝

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―こんな具合で話していると、小学生の頃の思い出が、記憶の中から鮮明によみがえり、麗香とこうして話すことが楽しく感じた。 「そういえば、小学校の卒業式の時、麗香泣いてたよね?卒業式になく女子は普通だと思うけど、麗香に限って卒業式で泣いていたのは意外だったなー」 「私に限って意外?失礼にもほどがあるよ。ほんっと、飛永は素で人を不愉快にできる才能の持ち主だよね。」 「……ごめん」 「いいよ。もう慣れた。あそこで私が泣いていたのは、小学校の出来事をいろいろ振り返ったら、切なくなっちゃったんだ」 普段気が強くて、強情な麗香も、雰囲気や、時と場所によっては涙を流してしまうこともあるようだ。 「そういう飛永だって、三年生の時に、クラスでいじめられて、泣いていたじゃない。あそこで私が助けなければ、いまでもいじめられていたのかもよ?」 「う……」 麗香は、狡猾である。三年生の時、いじめられていたのは、事実だし、麗香に止めてもらって、助かったというのも事実である。が、女子にいじめから助けてもらったという過去を記憶からよみがえらせて、僕の心に致命傷を与えるには十分すぎたようだ。 「ま、まぁでも、今はそのおかげでいじめてきていた前川とも仲良くなれたんだし、いいんじゃないかなぁ……」 「ふふ、冗談だよ。飛永は、根は強くて真面目だもん。あそこで私が助けなくても、自分でなんとかしてたよ。きっと」 麗香が冗談めかしてくれたおかげで、なんとか心に直接的な傷はこなかったようだ。こうして話していると、いつの間にか学校へついていた。家から小学校までの距離の二倍近い距離を歩いているはずだったが、麗香と話していたおかげか、すぐ着いたような気がした。校門の前で中学の先生が挨拶をしている。 「おはようございまーす。クラス割を発表するので、職員室前までお願いしまーす」 どうやら、クラス割を職員室前で発表するようだ。 「麗香、じゃあまた後でね」 「うん」 新しくできる友達に、女子と一緒に歩いている姿をあまり見られたくなかったからか、小走りで下昇降口まできてしまった。上履きを履き、職員室前まで行く。新しい校舎だが、誘導の先生がいてくれたおかげで、迷わずに職員室前までいけた。名前を探す。3組の欄に『烏葉麗香』と、麗香の名前があった。その下を見ると『三条飛永(みすじ ひえい)』と僕の名前がある。どうやら麗香とは同じクラスのようだ。張り出された紙に書いてある教室へ、新たな生活に夢と希望を持ちながら、僕は足を踏み出した。
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