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「みんな、おはようございます!1年3組の担任になりました、菱本美穂です!1年間、よろしくお願いします!」
高校生くらいの女の人の正体は、どうやら先生らしい。正直言って、先生らしいところは何もなかった。他の生徒も、いきなり入ってきた若い女性が先生である事実に頭が追い付かないらしく、口を開けた表情のまま、固まっていた。
「うーん、みんなの反応よくないなー。ま、いっか!いずれは仲良くなれるでしょう!それでは、挨拶します。起立!気を付け!礼!」
いきなり挨拶をすると言われたが、生徒は反応できたようだ。形式的にではあるが、一応、僕等は新たな担任の先生とは挨拶をしたことになった。
「それじゃあ、出席をとります。名前を呼ばれた人は返事をしてねー」
「阿部くん!」
「はい」
「伊藤くん!」
「はい!」
「大川さん!」
「…はい」
「烏葉さん!」
「はい」
「近藤くん!」
……出席確認は長々と続いた。前川との話に夢中になっていたから気づかなかったが、いつの間にか麗香も教室に来ていたようだ。このクラスは、38人のクラスらしい。全員の出席を確認するのには、3分近く要した。小学校からの友達も数人いるようだが、やはり、知らない人の方が多い。小学校3校に対して、進学先が中学校ひとつなのだからあたりまえだが、知らない人が多いと、どうにも緊張してしまう。こういうときにはいつも麗香の明るく、フレンドリーな性格が羨ましいと思ってしまうのだ。
「それじゃあ、入学式を行いますので、体育館へ移動しましょう!」
菱本先生はそう言うと、出席番号順に二列で廊下に並ぶように指示した。僕の出席番号は30番、前川の出席番号は29番だったので、並ぶと隣になる。軽くどんなことをするんだろうね、と話していたら、菱本先生に注意されてしまった。移動が始まり、体育館へと向かう。
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