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換気を兼ねて中庭を望む窓は全て開放しているが、やはり初夏ということもあってか風は通れど日差しの強さには敵わない。
エアコンをつけても構わないと学校長から許可は得ているものの、これから更に厳しくなる暑さを考えると、少し暑いくらいでエアコンに頼るのもどうかと憚られるのだ。
すると、秋月の「暑い」という言葉に反応したのか、志賀がパンッと両手を合わせてニッコリと微笑んだ。
「朔も髪型、オレたちと〝おソロ〟にしない?」
「は?」
「来る前にね、太鳳と今日暑いね~って話してて。ふたりでハーフアップにしたの。朔にもやったげる!」
「……ハーフ、なんだって?」
聞き慣れない言葉に疑問符を浮かべる秋月の横で、志賀の結われた髪を見ると、よく女性がしている、ふわっとしたようなクシュッとしたような素材の、リボンを輪にしたような髪留めが目に入る。
「そういやカワイイのしとるなぁ。へぇ、いまそんなんあるの?」
「これはねぇ、えいにぃのカフェにバイトに行った時に手芸が趣味のお客さんから貰ったの。カワイイでしょ?」
「猫とうさぎ柄なんだよ~」志賀の楽しそうな声が室内に響く。
購買に行こうと立ち上がりかけた秋月の肩をぐいっと下に押し込むようにして「はい座った座った~!」と、また彼を椅子に座らせるやいなや、手ぐしで彼の髪を適当に整え、蟀谷からぐっとてっぺんに向かって無造作に伸びた髪をひと纏めに持ち上げる。
「おい、変なモン使うな」
「〝変〟ってシュシュのこと? ごめんねー、これはひとつっきゃないからさぁ、朔は普通の黒ゴムね」
言うなりあれよと言う間に秋月の髪をヘアゴムでまとめ上げ、最後にキュッと締めると、
「はい、でーきた」
と満足そうに言った。
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