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俺達の懇願と桜
俺は一度渡米する必要はあるが仕事を日本に移すことを決めた。
同僚には少し娘の存在を隠さずに話して理解を得た15年も存在すら知らなかった子供を愛する女性が守り育ててくれていた話は好意的にとらえられスムーズに話がすすんだ。
「凱、一度こっちに帰ってくるなら娘を連れてこいよ。」
「相談してみるがどうかな?」
そんな会話を仲が良かったロバートは俺の娘を歓迎してくれている。桜本人は知らないところでアメリカでは桜は「俺の娘」だ。
いつか夏休みにでも連れて行こうと考えてはいる。
俺達三人はまず桜に伝える前に四人で住む為の物件を選ぶことにしていたが、忍には思い当たる場所があったみたいだった。
「凱、予算なんだが結構かかるかもしれないんだ。」
忍が見せてくれた物件資料は意外な場所だった。
「ここは・・。」
俺達がお世話になっていた内科医院の先生が加齢で医師を引退する話を聞いていた忍はその場所を選んでいた。
入院施設はないが小児科や内科の外来のみで街にとっては大事な病院でもあった。
「凱が金は出すっていったけど、俺は俺で出すから病院の二階が住居になっているんだけど結構広いし駐車場や庭もあるんだ。
少し手を入れる必要はあるけど、桜が学校から帰ってきても俺がいるから凱や登が仕事で外に出たり遅くなっても桜が一人になることはないんだ。」
桜を一人にしたくないというのは俺も同じ思いだからいい話だと思う。登にも話をしたが賛成だった。
結局土地と物件は俺。
病院の機材やリフォームは忍で住居部分は登が資金を提供することになった。
契約を済ませてから俺達は今後の話を桜に話す。
桜は今は忍の住居から学校に行って帰宅している。
ハイツには放課後に顔を出しているからハイツは残したいのかもしれない。
俺はどんな商談も取引も怖いと思ったこともなかった、緊張さえ心地よかったのに。
咲に告白した以上の緊張と恐怖が俺をいや俺達を襲う。
何度も書類をチェックしてどういう順番で桜に話すか打ち合わせをしても三人とも落ち着かない。
話をしてどんな反応を桜がするか?
全く読めない情けないと俺達は思った。
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