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【1】序章
「はぁ……、はぁ……」
狼の遠吠えが聞こえる。
彼らに襲われることはない、とわかっていても、辺りが暗くなると聞こえる咆哮が怖くて仕方なかった。
洞窟の上部にぽっかりと開いた穴から届く鈍色の月明りの元、自ら脱ぎ捨てた服を集め、そこに染み付いた獣の匂いを嗅ぐ。
この匂いが、狼に襲われない理由。
そして
誘発された欲情が何を意味するのか、この時のミアは知る由もない。
全身の細胞が沸き立つような感覚。
うなされるような微熱。
そのどれもが快感で仕方なかった。
裸のまま身を丸め、アヌスがジクジクと濡れる感覚に震えた。
と、その時だった。
洞窟の入り口から、最果ての大地を踏みしめる音が聞こえる。その足音に狼のような軽やかさはない。重々しく、堂々たる美しさを持った――。
「申し訳ございません。私はまた……」
声が洞窟内に反響する。
ミアは、視界に大きな獣の姿を捉えた。銀色の艶やかな毛並みを持った夏毛のホッキョクギツネだ。
ただ、その大きさは犬などの比ではない。
ミアを背中に乗せて走ることも、口に咥えることもできるその獣は、ふかふかのしっぽの先まで合わせたら五メートル近くあるのではないだろうか。
その巨獣が地面に腹をつけ跪き、ミアの胸に額を摺り寄せる。空気をたっぷりと含んだ毛に鼻をうずめれば、この獣のエキゾチックな針葉樹のような匂いで胸が、頭が満たされていく。そして、鋭い牙を持つ口元から涎を垂らした獣は、本能で脚を開くミアの恥部をざらつく舌で舐り始めた。
「あ……ッ」
握りしめていた服を噛み、羞恥にまみれた熱い視線を獣に向けたミアは腰を戦慄かせている。
もうこんなことは、三日三晩つづけている。
身体の芯に入り込んだほとぼりが覚めないのだ。
愛撫だけでは足りなくなっていたミアのもどかしさを感じ取るように、この日はこれだけでは終わらなかった。
「や……」
黒々とした濡れた鼻先で身体を返される。その瞬間、獣の股間に大きな瘤のある隆々とした赤い陰茎が出たり入ったりしているのを見てしまった。
(あれが、欲しい……)
弛緩した身体では四つん這いにはなれず、尻を高くつきあげる。
「ふあぁッ」
肉塊を受け入れたことのない蜜壺に獣の舌が入り込む。細く窄め、小さなアヌスをミシミシと押し広げるように入って来た舌は、ミアに今まで味わったことのない快楽を与えた。
「ーーもっと、もっと奥までください」
ミアの薄紅色の唇から、普段とは違う甘ったるい声が漏れる。
獣は身震いをしながら、ミアの尻にかぶりつくように奥へ奥へと舌を押し入れて行くのだった。
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