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「……それが、理由?」
腹から血が滲む。
どのくらい失血したのだろう。
ここに来た途端、僕は彼女に刺された。
痛みはとうの昔に通り過ぎて、意識が薄れつつある。
「そう。これは復讐よ。あなたを振り向かせて、私の手で殺す。私の無念が桜の散るあの日に前世の記憶を思い出させたの」
そう言って微笑む彼女はそれでも美しかった。
なんだ……復讐なんて必要なかったのに。
前世の僕も今の僕と同じ、君のことを好きだったに違いない。
刺されても、殺されても、愛おしいと思うほどに……。
包丁を持って佇む君を満月が静かに見下ろしていた。
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