きみのて。

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きみのて。

「なあ、覚えてるか、僕」  写真の中で、サッカーボールを抱きしめて笑っている僕。その隣には、大好きだった“彼”の姿がある。その姿を指でのなぞりながら、僕は自分自身に語りかけた。 「忘れるはずないよな、一生。……あの日があったから、今の僕があるんだから」  小さな頃、僕にはヒーローがいた。  凄い怪力があるわけでもない、魔法が使えるわけでもない、空が飛べるわけでもない。それでも僕にとって、彼こそが唯一無二のヒーローだったんだ。  彼の名前は、富士見澄人(ふじみすみと)。  僕達が、澄人兄ちゃん、と呼んで慕っていた存在だった。
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