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「須崎が速く、強いのは、俺がいちばん知っている」
覚えのある台詞回しに、顔を上げる。
「たとえ共に走ることがなくても、それは変わらない」
まっすぐに見つめてくる瞳から、逃げられない。
「だから俺が一番になる時、その景色を一緒に見て欲しい」
完全に白けてしまった会場で、この台詞の意味を理解しているのは誰だろう。
「...だったと思うんだが、違ったか」
真っ白になった頭で、遠くの喧噪を聞く。目を逸らせば負けだと、本能が言う。
「違わない、バカ」
「なら、よかった」
微かに綻ぶレアな表情を、私は確かに知っている。
でも、ちょっと待って。
だとしたら私達は、既に『そんなのじゃない』じゃないか。
一気に熱くなる体を、今度こそ諦めることにした。
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