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わかってたつもりだったんだけどなあ。
空気しか吸えないいちごみるくの紙パックを振ると、まだ中身の音がする。ストローを抜いて、紙パックを開ける。
「おお彩乃、久しぶりだな」
「そうだな」
こうして向かい合うのは。同じクラスだから、夏休み明けから毎日顔は見ている。ただ、これまでお互いに掛ける言葉を持て余していたのだ。少々五月蠅いが頭の回る前副将で、人付き合いの苦手な前主将とは良いコンビだった。彼のことだから、いらぬ気を遣っていたのだろう。
「実行委員の女子からプリントを預かったぞ」
「サンキュ」
どれどれ。第一印象、好きなところ、直して欲しいところ
「それにしても、水臭いな。いつから付き合ってた?」
「誰と誰が?」
パックを傾けて、飲み干してしまう。ストローの空気を吸う音に変わる。
「お前とニシ」
「いやいやいや、勇一とはそんなのじゃないって」
「はあ?」と眉をひそめる表情には、遠慮なく「アホか」と書いている。
「じゃあ3日目のアレはどう説明する?」
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