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文化祭前の浮き足だった教室とは、無縁の話だ。
「じゃあこれは?毎年断ってきたくせに」
実行委員から推薦されたペアから生徒投票で1位を決める、ベスト・カップルというふざけたイベントだ。実際ふざけていて、運動部の主将と副将、クラス担任と副担任、...なぜか野球部の正バッテリーが毎年必ずエントリーしている。例年では男女ペアが半数くらいで、本物のカップルが1組か2組かという割合だ。だから、恋人じゃなくても問題はない。
「今年は勇一がOKしたって言うから」
「騙されたんじゃないのか」
「あいつ、ああ見えてイベント好きだからな。最後だし、商品にでも釣られたんじゃないか」
食堂のタダ券は、小遣いでやりくりする高校生にとって魅力的だ。
「...もういい」
結局、誰が世話を焼くと思ってて。
首を突っ込んできたのはお前だろう。
口にはしないが、お互いの主張は読めてしまった。
「大丈夫だよ。私、もうフラれてるから」
「はあっ!?」
ガタンと椅子から崩れる様子は、まるでコントだ。
「う、嘘つけ」
「本当だよ。『そんなのじゃない』ってはっきり」
吐き出すと、いくらか心が軽くなった。代わりに頭を抱えた島田には、ちょっと、ちょっとだけ、申し訳ないと思うけれども。
「大丈夫だよ」
言い聞かせるように、一番最後の質問を指でなぞる。
2人の将来は?
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