腐った林檎が、います

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「お前の仕事はな、俺のシモの処理だよ。売春婦のようにいつでも股をひろげてまっている仕事だよ」 【奥本先生】は勿論承知しなかった。ふざけるな、と怒鳴って帰ってしまった。 だが、帰ってきた旦那、父親を見て母と娘は発狂した。 「あんたはあたし達を破滅させる気か!お願い、黙ってあの人の言うことを聞いてちょうだい!それであたし達は幸せになれるんだから!」 そこでようやく【奥本先生】は絶望した。 逃げようと思ったに違いない。 東京駅で先生は確保された。 いや、俺が確保したのだった。だが、見つけて確保したはいいものの、俺はどうしても先生を林檎に渡そうとは思えなかった。 俺に唯一優しくしてくれたからだ。林檎の手先になっていた時も、どちらかといえば【奥本先生】に会えるのが楽しみで林檎の下で働いていたと思う。 「頼む、見逃してくれ。山本、いや」 そうして【奥本先生】は、俺の下の名前を呼んだ。 何年も経つのに覚えていてくれたことに感激した俺は、先生を逃がすことにした。 まずは東京駅の近くのビジネスホテルに匿い、三日後には海外へ行く手筈をつけた。先生は俺の恩人だったから。 でも、そうはうまくいかなかった。 「よくも裏切ったな」 そう言って笑った林檎が現れたのは二日後だった。 ホテルのドアをパールでこじ開け、ドアチェーンを大げさな機械で切ってドカドカと何人もの悪人を連れて俺と【奥本先生】を取り囲んだ。 そして俺に言ったのだ。おい、選べよ。 「こいつを俺に捧げるか。それともお前の命を捧げるか。もしもお前が俺の思うとおりにすれば、命だけは助けてやろう。いや、俺が命を買ってやるよ」 俺は、自分が可愛かった。受ける暴行にも耐えられなかった。一枚、一枚爪という爪を剥がされ、一本、また一本と折られていく指の痛みに耐えられなかった。 俺はたった一人の味方を林檎に捧げてしまったのだ。 やめろ。やめてくれ、と【奥本先生】は半狂乱になって喚いた。 怖い連中がドアの前で待機していて、部屋の中にいるのは血まみれで泣きべそをかいている俺と、あいつと、【奥本先生】だけだ。 白いシーツが敷かれたシングルベッド。その上で【奥本先生】が犯されている。正常位で、抵抗するたびに重い一発を顔に食らっている。 俺は床に転がってただそれを見ている。 「お前のことが嫌いだったんだよ、奥本」 林檎が歯を剥き出しにして笑う。 「好きで、嫌いで、嫌いで、好きさ。奥本。お前は眩しすぎた。何者にもお前は汚されない。だがな、俺はお前のことを何度も何度も頭の中で犯したよ。これからは現実だ。楽しくヤろうぜ。もう離さねえよ、俺の女だ、俺の女だお前は」 「う、う、こんな」 「こんな、なんだ?」 「こんなことをしても、俺はお前のものにはならんぞ、林!」 先生が犯されながら怒鳴った時、林檎は一瞬ポカンとしたが、嬉しそうにまた、醜悪な顔で笑った。 「いいぞ、それでこそ俺の惚れた男だ。一生かかってもいい、その口から俺はあなたのものですと言わせてやる。だから簡単に降参するんじゃねえぞ、ほら、ほら、どうだ!奥まで激しく突いてやろう!」 「うわあああ、ああああああ!」 俺は、惨めだった。俺には爪も、健全な指も残ってはいなかった。小便をチビって、糞も少し出ていた。鼻水も、涙も、涎さえ垂れ流しだ。だが、俺には頑強な武器がまだ残っていたのだ。 俺は重い体を起こした。その時林檎は丁度何発目かの放出を終えて、【奥本先生】の尻の穴から少し萎えた一物を抜いた所だ。 飛びかかった。林檎は目を見開いた。俺は、歯を剥き出しにして思い切り、奴のアレを思い切り、噛んだ。
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