素敵な? ダーリン

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「うわ!」  無言でシンクの脇のグラスを取った本橋がペットボトルの蓋を開けて勢いよく注ぎ込もうとした弾みに、手元が狂ったのか素早い動きに身体が着いて行かなかったのか。  中味がグラスの中ではなく、彼の服に派手に掛かってしまった。 「おい、ナオ何やってんだよ!」  慌てて拭く物を探す秋月に、本橋は溜息を吐いて汚れた服を見下ろした。 「……拓馬。悪いけどシャワー貸して。たぶん着替えて拭いただけだと、ベタベタするから」 「ああ、行って来い。ここは俺が片付けとく」  秋月の言葉に彼は一瞬口籠り、小さな声で「ありがと」と告げてバスルームへ向かった。  幸いと言っていいのかどうか、大半は秋月に掛かったらしく床にはほとんど零れていない。とりあえずキッチンの掃除を終えた本橋が何か飲もうかと冷蔵庫に目を向けた瞬間。 「拓馬! 拓馬、ちょっと来て!」  本橋が秋月を呼ぶ声。やけに焦った様子だ。
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